
環境問題と住まい
地球温暖化についてはこれまで、「温暖化は深刻だ」という話と「実は地球は温暖化していない」という正反対な議論がなされてきました。これについては、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が最近の報告書で、「温暖化は疑う余地がない」、「温暖化は人間活動起源の温室効果ガス排出などによる可能性が極めて高い」と結論付けています。
日本では2020年秋、菅前総理が「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロとする」と宣言しました。これを受けて、今後住宅などの建築物についても環境対策が重要となってくると考えられます。
これまでは、地球温暖化などの環境問題と聞くと、多くの人が「それは重要な問題だな」と感じても「その問題と自分の生活はつながっていない」と考えていたと思います。しかし、最近、コーヒー店のストローが紙製のものになったり、アパレルショップで服のリサイクルコーナーが設置されたり、レジ袋が有料化されたりしたことなどからも、環境問題が少しずつ身近になってきたと感じる方も多いのではないでしょうか。
将来の世代のためには、温暖化対策の他にも再生可能エネルギー利用を進めるということも大切です。これは石油や石炭など限りある資源を少しでも多く将来に残せるよう、代替エネルギーの開発・利用を進めるということです。これについては、温暖化の議論同様「石油資源はまだまだ沢山ある」とか「石油資源を直接燃やす火力発電が最も環境に優しい方法だ」など、様々な議論があります。しかし、燃料資源の多くを輸入に頼っている日本においては、将来の燃料資源不足に備えて石油・石炭資源に代わるエネルギーを生み出すことは大切だと考えます。
断熱レベルの現状
日本の住宅の断熱レベルは、欧米と比べてたいへん低いものです。日本の住宅のうち、無断熱の住宅が約3割、最近、説明の義務化がされた省エネ基準の断熱等級4(平成11年基準)でさえ、クリアしている住宅は約1割というのが現状です。
日本での断熱性能にまつわる義務化は、今回が初めてのことです。この説明義務化自体は良いことと言えますが、義務とされる断熱等級4自体は欧米等先進国の基準と比べると大変低い性能です。なぜ日本の住宅の断熱性能はこれほど低いのでしょうか?
その理由のひとつは、ここ100年程の間に日本の住宅が質より量を重要視して供給されてきた歴史が関係していると考えられます。関東大震災からの復興や、戦後から高度経済成長期を経ての急激な人口増加に対応するため、首都圏を中心に多くの住宅が必要となり、壁は薄い板張りでシングルガラスにトタン屋根、土間にかまどといった簡易な住宅が多く建てられました。このころの住宅には断熱性能を高めるという考え方は無く、とにかく雨風をしのげればよいというものだったのです。
もう一つの理由として、日本の不動産業界において戸建て住宅の価格が20年でゼロになるとされていることがあると考えます。このため、ライフスタイルが変化して家を売りたいと考えるころには、建物の値段はほぼゼロとなり、更地にした方が売れるということになってしまうのです。
これに加え、日本特有の地震や台風などの自然災害の多さが、日本の住宅の平均寿命を26年と非常に短いものにしているのです。その結果、断熱性能を高めるための追加費用が26年間でペイしないことから、「コスパが悪いから、冷暖房費が無理なく払える範囲の断熱性能で我慢しよう」ということになり、低気密・低断熱の家が多いということにつながっていると考えられます。
また、賃貸住宅においても低気密・低断熱が多く、アパート住まいの方の多くが冬の結露やカビに悩まされているという現状があります。これは、賃貸物件の冷暖房費は基本的に借りる側が負担するものなので、貸す側としては、少しでも低価格で多くの賃貸物件を建てたいという思いから、「環境負荷を減らすために、サッシの性能を上げて断熱性能を高めよう」などと考える建て主は少ないという現状があるためと考えられます。
このように、近年の多くの住宅は、夏は暑く、冬は寒いというのが当たり前という環境であり、その中で育ってきた私たちは、高気密・高断熱で自然の光や風の通る家の快適さを知りません。また、「もったいない」、「我慢強い」といった日本人気質というものも、寒さ・熱さを我慢して過ごすのに慣れてしまう、ということにつながっているのかもしれません。
でも、本当に、低気密・低断熱な家がコスパがよい家と言えるのでしょうか?
エコハウス
エコハウスとは、住宅の材料や設備などの断熱化・気密化・省エネルギー化を図った住宅のことです。
エコハウスの条件を具体的に整理すると
①建物外皮の断熱性能を高める
②省エネ・創エネ対応型設備の使用
③自然エネルギーの活用
の3つに分けられます。一定基準を満たすことで融資や補助金の対象になります。