私たちは、さまざまな家族が織りなすライフスタイルを温かく受け入れ、その中で輝くひとりひとりの価値観を尊重する家をつくることを目指しています。

東京都日野市にある木造二階建ての住宅です。
こちらの住宅は、ZEH住宅(ゼッチ / ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)※)として、住む人にも環境にもやさしい住宅となっています。

A.家の外観
屋根と外壁の色は、太陽光パネルと調和するようにグレー系の色としました。形は三角形屋根の 2 階ボリュームと、箱型の 1 階ボリュームのシンプルな組み合わせです。
傾斜地の町並みに対して、無個性に参加するわけではなく、端正かつ個性的な表情でこの町に参加していくことを目指しました。

B.屋根と外壁
屋根と 2 階の外壁は、大きな地震の揺れを考慮し、丈夫で軽量な「ガルバリウム鋼板」を採用しています。(屋根や外壁の重さが重くなるほど地震による建物への負荷が増大します。)
一方で、寝室のある1階は遮音性能の高い「窯業系のサイディング」を採用しました。このサイディングもガルバリウムと同様に災害に強く耐久性の高い建材です。
公園側の西日が強くあたる2階の外壁の一部を断熱性に優れた「木の壁(レッドシダー)」としています。自然素材である木は、紫外線により徐々にシルバーグレー色に変化していきます。歴史的建造物の木の外壁のように経年優化していく姿は、この町に優しい印象を提供していく存在になっていくと思います。

C.2 階の窓の工夫
太陽の「動き」や「高度」は春夏秋冬で大きく変化します。冬は太陽高度が低いため、この家の南側隣地に建つ共同住宅の影に入り、この家の南側の窓からの直射日光は限定的になります。そこで、周囲の建物の配置を分析し、南側以外の方位の窓の大きさと位置を工夫しました。その結果として、2 階のLDKは季節や時間の移り変わりによって、多彩な明るさが感じられ、心地よく過ごせる生活の場となっています。

D.ハイサイド窓
2 階のキッチンの北東側の壁にハイサイド窓(高い位置の窓)を設けています。この窓からさわやかな朝日が差し込みます。ライトグレーの壁に反射した柔らかい光は、ダイニングキッチンに明るさと安らぎをもたらし、ここちよい朝の時間となります。

E.対面キッチン
使いやすく収納力もある幅の広い対面キッチンカウンターです。料理をしながら、ダイニングやリビングにいる家族や友人と会話を楽しむことができたり、子供の様子を見守りながら家事を進めることができます。背面のキャビネットも幅が広いため、食材や生活雑貨を十分に収納することができます。

F.無垢の木の床
健康と快適性を重視し、毎日触れる床の素材を自然素材である無垢材(オーク)としています。無垢材は長寿命で、時を経るごとに深い表情に変化していきます。汚れや傷がついても、表面を研磨したり水分を含ませることによって復活させることができることも魅力のひとつです。

G.木とグレーの壁
リビングと階段の壁の一面は、「木」と「グレー」の壁です。「木」はレッドシダーという無垢材で、調湿性と断熱性に優れています。木目や色や節など様々な個性がありますが、年月を重ねると風合いのある落ち着いた表情に変わっていきます。家族の成長とともに、家の壁の変化も楽しむことができます。 リビングの壁と天井の一部の色をグレーにしています。グレーは陰影をわずかに吸収してくれる色で、個性的な木の質感に対して、穏やかな雰囲気となります。
I.2 階のトイレ
リビングからトイレに行くことはよくあることですので、リビングに隣接したトイレとしています。少し奥に配置することによって、キッチンやダイニングから直接見えない関係にしています。

H.バルコニーと洗濯機
洗濯機から近い南側バルコニーです。濡れて重くなった洗濯物を持ち運び、干すという毎日の物干し作業にとって、よい位置関係です。

J.シーリングファン
リビングの天井にシーリングファンを設置しています。冷暖房が必要な時期は、シーリングファンを回すことによって、空気が循環され冷暖房効率が上がり、電気代の節約になります。風向きを「夏は下向き」とし、「冬は上向き」とすることにより快適な状態となります。梅雨時期や花粉の季節などに部屋干しをする際にも活躍してくれます。
K.小屋裏収納
リビングにある可動ハシゴで洗面脱衣室の上にある小屋裏収納に行くことができます。天井の高さは低く、狭い空間ですが、布団ケースや季節家電を収納することができます。

L.1 階の窓の工夫
1 階の窓は天井に寄せて設置しています。窓の上に垂れ壁がないことによって、天井面がふわっと明るくなり、広がりを感じることができます。さらに、天井に寄せて設置することによって、夏場に窓を開けると天井付近に溜まっている熱気を外部に排出し、室内の風が動き出します。
M.1 階の部屋
家族の成長とともに、暮らし方は変化していきます。1 階には、大きな部屋と小さな部屋があります。大きな部屋は子供の成長に合わせて、収納ユニットや間仕切壁、2 段ベッドを使って部屋を仕切り、その時々の家族のあり方にふさわしいサイズの部屋に変えることができます。暮らしの変化に合わせて自由に変えることができることによって、30 年後も使える部屋となります。

N.幅広の玄関
すこしだけ幅の広い玄関土間スペースとしています。玄関扉側の壁にフックを取り付けると、子供の帽子や保育園カバンを掛けることができます。ベビーカーも置いておくことができます。

O.階段とギャラリーウォール
朝、目覚めて、階段を上がると徐々に視界が広がり、外の明るさを感じます。西側に大きな窓があることによって、日中は階段の背の高い壁面が自然光で照らされています。この壁に子供の絵やアートを飾ることで、単なる上下の移動空間ではなく、インスピレーションを与えてくれる楽しいギャラリーウォールになります。
※)ZEH住宅とは、”エネルギー収支をゼロ以下にする家”のことです。太陽光発電による電力創出や省エネルギー設備の導入、外皮の高気密・高断熱化などにより、家庭で1年間に消費するエネルギーの量を実質的にゼロ以下にする家となります。
photo by Tabuse Hiroshi