
宮城県石巻市の旧北上川近くに明治期から建っていて、東日本大震災の地震と津波により被災した土蔵の再生プロジェクトです。
この土蔵の周囲の建物は、公費解体により次々と無くなっていく中で、土蔵の調査をしました。土蔵の所有者と、補修や曳家などによる再活用を検討する中で、この土地が大規模堤防建設地と指定され、解体撤去を余儀なくされました。そこで、将来的に活用するため、屋根や土壁を落とし、軸組を解体して保管をするということになりました。そして、その2年後、従前の土蔵の復元ではなく、軸組を利用した新たな蔵という形で再建することになりました。
新たな蔵は現在、敷地隣の日本料理店の客席であると同時に、地域住民の活動の場として利用されています。

▲この写真は震災から2年後、2013年3月11日の土蔵の状態です。日々の風雨と余震により、損傷が進行している状況でした。既存の土蔵は、切妻・平入、塗籠屋根、二間×六間の2階建で、南側1階に土塗りの引分戸を備えた鳥居型付大戸が左右二か所あり、カーブした鉄製持ち送りに支えられた深い下屋庇に覆われています。架構はキングポストトラスが一間毎に並びます。五平の柱の側面には横方向のえつり竹を納めるためのL型の掘り込みがあり、そこに納まった竹はしゅろ縄で巻いた後に漆喰に塗り込められています。柱の外部は防水のために杉皮を貼り、間渡し竹を横に組まれています。その上に、縄を埋め込みながら、少なくても5~7層の土と漆喰の層がありました。

▲保管していた柱梁などを仮組してもらい、詳細部分を確認しました。

▲棟式で餅まきをし、地域の皆さんに「福」を分けます。

▲雄勝石で壁を仕上げたキッチンスペース

▲クリスマス会の準備をする子供たち
photo by Kurohashi