
集合住宅の1住戸(3LDK)の改修です。親の代から飲食店を営むクライアントさんです。家族以外の人が頻繁に家に出入りする環境の中で過ごしてきたことから、新しい家もそのような暮らしの楽しさを味わえる家を目指すことになりました。そこで、既存建物の構成と予算を踏まえ、次の3つのことを実現しました。
1.人を招きいれる
初めて訪れる客人でも、室内に入ると窓側一面に設けたエンガワベンチに吸い込まれるように落ち着きます。誰もが居心地良く感じられるこの家は、誰にでも温かく明るい建主夫妻の人柄が感じられる空間です。
2.風景をつなげる
改修前は個室に分けられていたことから、窓から感じられる風景は断片的な存在でした。そこで、リビング床の高さを少し上げて、境界線上にエンガワベンチとインナーテラスを設けました。この工夫により、リビングと窓の間に改修前には無かった「間(ま)」が生まれました。窓を捉える視界の感覚を変えたことで、窓の先に拡がる風景が繋がり、外部の大きな風景を身近に感じられるようになりました。
3.風通しと熱環境の調整
改修前は風通しが悪く、夏は暑くて冬は寒い家でした。そこで、断熱材を強化するだけでなく、「断熱空気層」となる空間(南東側にインナーテラス、西日側に家事収納室、北側にクローゼット)を設け、中央に家族が日常的に過ごすリビングを配置しました。季節や気候により、各部屋間の建具で中央の空間と繋がる領域を調整し、快適に過ごすことができるようになりました。




▲クライアントさんと友人たちによる塗装ワークショップの様子です。ワークショップを通して、この家が参加者にとって親しみを感じる家となります。床と壁の木部はエゴマ油塗装、白い壁と天井は珪藻土塗装です。
photo by Kurohashi